儚くて、白い、ひとひらの

ことばたちは舞う雪のようにはかない。

Bloodborne私見。

狂気の中にも、理はある。

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PlayStation+に加入していると、毎月ソフトが何本かフリープレイで遊べる。3月、フロムソフトウェアのソフト、“ブラッドボーン”がプレイできるというので、いつかやろうと何となくダウンロードした。

フロムのソフトといえば、PlayStation3のころ、デモンズソウルをプレイしたくらいで、あまりの難しさに挫折してしまったというくらい、良い思い出がない。

それでも自分がブラッドボーンをダウンロードしてみる気持ちになったのは、その内容がホラーゲーム(だという認識)だったという一点に尽きる。

 

ホラーゲームが好き、というとえっどうして、怖い思いをしてまでプレイするの…という反応をされる。見た目は血みどろだったり、グロいシーンを見せられてもなぜ平気なの?と思う人がほとんどなのだろう。

しかし自分がホラーゲームに求めるのは、その種の怖さではない。その狂気の世界にある秩序と理をみてみたいという欲望なのである。

 

こんな考え方をしているのは、世界でひとりくらいだろう…と思うような狂気的な思考は、誰しも1つは持っていると思うのだが、自分以外の誰かが全く同じことを考えを持っていた衝撃を受けたことはないだろうか?自分はある。

小学生か中学生の頃、自分は自分がまだ訪れたことがない場所、例えばアメリカとか中国だとか、その地は実際には存在していないのではないかと思っていた。しかし誰に言ってもその考えを理解してもらえず、こんなことを考えているのは、世界で自分だけなのかもしれないと本気で思っていた。

そんな時、世にも奇妙な物語というドラマで、全く自分の考えと同じ男が出てくる話をみて、驚愕してしまった。そして、自分が抱くただの狂気だと思っていたその思考が、世に存在する理になったと感じた瞬間でもあったのだ。

 

前置きが長くなったが、自分がブラッドボーンをプレイし、クリアした時に感じた気持ちが、まさにそれだったのだ。

人の思考は突き詰めれば狂気、だがそこには理路整然とした論理が貫いているのだ。

 

ホラーアクションという認識で始めたブラッドボーンだったが、終わってみれば宇宙の話だった。何を言っているのかわからないと思うが、これが真実だ。

 

プレイ時間は50時間程度でクリアしたが、体感では200時間はやったような疲労度だった。あの世界の中で、濃密な緊張感を強いられるのは大変だったが、絶望感はなく、前向きにプレイできたことが不思議である。

 

ブラッドボーンのあらすじだが、舞台は中世、主人公が目覚めると、ヤーナムという街におり、そこは“獣狩りの夜”を迎えている。街にはびこる獣化したなにかを主人公が狩人として狩り、この病気が蔓延した原因を探っていき、最終的には真実にたどり着く、というものである。

 

しかしながら、前編を通して物語はほとんど語られない。それどころが、クリアしても真実が明らかになったのかどうかすらあやしい。

だが、アイテムに書かれた説明文や、街中の人々の会話、メモ書きなどを断片的に集めると、その世界がなんとなくわかってくる。

 

ここからはかなりの私的見解。

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さて、自分にはもうひとつの持論がある。私たちの生きるこの世界、宇宙は一体なんなのか、ということを考えた時、やはり宇宙とは、誰かの脳内ではないか、と自分はずっと信じている。

そしてまた、自分の脳内にも宇宙が存在するし、別の誰かの脳内にも宇宙は存在し、入れ子のように宇宙とは広がっているのではないか、という結論である。もちろん、理論的な証明ができるわけではないが、ただ漠然とそうなのではないかと信じている。

 

ブラッドボーンの世界は、結論としては誰かの悪夢の世界だった、その誰かが目覚めることによって獣狩りの夜は明ける、ということが語られる。

しかしながら、世界の中にはまた、悪夢の中で誰か別の誰かが見ているであろう悪夢らしきものも登場する。そして(おそらく)この世界の人たちが自分自身の悪夢=宇宙を持つことを目指しているということもわかる。

そして主人公自身がその宇宙を手に入れるエンドも存在する。

 

まさに自分の考える、宇宙は誰かの中に内包されたもの、という考え方にかなり近しい思想を持ったゲームだったこともあり、夢中になってプレイしてしまった。

 

言ってみれば誰かの狂気、心の中にあるものを惜しげもなくプレイヤーに寄り添う気持ちゼロで構築された、完全にプレイヤーを突き放したこの世界観をきちんと形にし、一本のゲームとして世に出したフロムの勇気と力に敬意を表したい。

 

5月にはダークソウルのリマスターも出るということなので、購入する予定。シリーズ未経験の自分は楽しんでプレイしたい。