儚くて、白い、ひとひらの

ことばたちは舞う雪のようにはかない。

美しい花

第一世界での激動の旅が終わり、俺もようやく、休息を取ることができるようになった。

 

仲間たちは、原初世界に帰れないなら、まだこの世界でやるべきことがあると各地に散っていった。俺は、この世界に召喚されてからは、ずっと動き続けていたので、この美しい世界の風景を、立ち止まってみることすら出来なかったことに気づき、今更ながら世界を巡ってみようと思い立った。

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少し前、俺は、妹に、心配させない程度の近況を綴った手紙を添えて、甥っ子が健やかに育つことを祈って買った、クリスタルでできたアクセサリーを送った。そして、一つ調べて欲しいことがあることを手紙で伝えていた。

 

そろそろ返事が来る頃かもしれない。

そう思って石の家に帰ると、タタルが手紙と小さな荷物を預かっていてくれた。

 

「妹さんからお届けものが届いていまっす!たしか妹さんは園芸師さんでしたね?荷物からお花のイイ香りがします〜。」

 

彼女は嬉しそうにしている。

せっかくだし、タタルも中を一緒に見るかい?と誘うと、目を輝かせて頷いた。

 

小さな荷物を開けると、紫の小さな花がついた花束がつめらていた。

 

「可愛らしい花ですー!花を見ると幸せな気持ちになりまっすね!何というお花でしょうか?」

 

俺も花の名前は知らないんだ、と答え、せっかくだからひと束、石の家に飾るといい、と花束を手渡した。タタルは嬉しそうに、アリアヌと一緒に、部屋の奥に花瓶を探しにいった。 

 

俺は妹からの手紙を確かめた。

甥っ子に手を焼いていること、俺にも面影があることなどが綴られていて思わず目を細める。

家族が元気でいることが、俺の何よりの活力でもある。

 

そして、手紙の最後に、調査を依頼した件についての答えが綴られていた。

 

「みてください、冒険者さん!部屋が一気に明るくなりました。お花はやっぱりステキな力がありますね!」

 

タタルの声に顔を上げる。

小さくて美しい花がカウンターの上に飾られている。

 

「この花は、紫苑(シオン)という花らしい。この花の花言葉は…」

 

俺はそこまで言うとことばを詰まらせた。

タタルがハッとした顔で俺を見た。

 

「…泣いて…いるのでっすか…?」

 

俺は自分の顔に手をやった。気がつかないうちに涙が流れていた。あの闘いの中でも、涙を流すことなんて一度もなかったのに、俺は、泣いていた。

 

生きていること、前に進んでいくしかないこと。このあたり前の不可逆の世界が、こんなにも眩しいことを俺は知ってしまっていた。未来はいつだって今より明るく見える。まるで進むべきはこちらだと指し示すように。

 

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第一世界に戻った俺は、妹が送ってくれた紫苑の花束を手に、ひとりテンペストに向かった。

 

エメトセルクの存在が消えた後も、彼の作り出したアーモロートを模した幻影都市は、その姿をそのままに残していた。俺は、その都市が見渡せる場所を選んで、腰を下ろした。

 

そう言ったところで、思い出すわけもないか。

 

そう呟いたエメトセルクの姿が思い出される。俺はその言葉の真意を心の何処かで気がついていながら、直視しようとは思わなかったのかもしれない。

 

エメトセルク、お前にとって、俺が生きていた時間なんて、呼吸をするよりも短いかもしれない。だがその中で、俺はたくさんの出会いとともに、たくさんの命との別れを経験した。去っていったものたちは星へと還り、それは取り戻すことはできない。時は不可逆なんて、当たり前の理だったはずなんだ。

 

だがお前は、失ったものを取り戻す、その術を知ってしまっていた。お前は問いかける、お前には取り戻したいものはないのか、そしてそれが取り戻せるなら、私と同じ行動をとったはずだ、とー

 

だが、きっと、エメトセルクが取り戻したかったもののかけらたちは、もう、自分の人生を生きてしまった。過去の先である未来を生き、お前が取り戻したいものとは違うものになっていたのだ。きっと、俺自身も。

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妹に貰った手紙を開く。

 

"兄さんからお願いされた、アーモロートとという都市に咲いていた花、アルフィノさんのスケッチを見せてもらったけど、おそらく藤の花じゃないかと思うの。東方では、この花を棚にして楽しむそうだけれど、これは自生した藤の花だと思う。実際に見てみないとわからないけれど。

 

藤の花の花言葉は、"歓迎"そして、"あなたを離さない"などがあるそうよ。蔦となり絡めつくその姿がそうさせるようね。

 

それと、この花に答える花言葉の花を用意してほしいとのこと、私なりに悩んだけど、紫苑を選んでみたわ。

 

紫苑の花言葉は、"君を忘れない"よ。

 

兄さんが花を用意してほしいなんて、女性にあげるわけないわよね。きっと、去りゆく人に捧げるためだと想像したの。藤の花のようにきっと大切なものを守るために尽力したひとなんでしょう。

 

もし、その大切なものとともに消えていったのならば…その人が守ろうとしたものは、私たちは覚えていてあげたいわね。

 

そう思ったら、藤の花へのアンサーは、紫苑しかないと思ったのよ。

 

息子が生まれて、人が人を生む意味を考えるようになったの。きっと、美しいこの世界を覚えているひと、守るひとを繋ぐためなんだって、最近は考えるの。"

 

俺は手紙をたたんで鞄にしまうと、足元に紫苑の花を手向けた。

 

エメトセルク、お前は最後まで、俺の敵だった。分かり合えたとも思っていない。

俺は俺の旅路の中で、多くのものを背負いすぎた。光を溜め込みすぎた、あの俺は、その姿そのものだったのかもしれない。

 

だとしても、世界が統合し、ここではない世界が復活するのも、背負ったものを誰かが代わりに背負って次元の狭間に消えるのも、それは違うんだ。もう、俺という英雄が、人の思いを記憶し、引き継いでいくしかないんだ。俺自身が、もうそこまで生きてしまったんだ。

 

俺はお前のことを決して忘れない。

お前がたしかに生きていたことをいつまでも覚えていよう。

 

俺はそう呟いてテンペストを後にした。

 

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クリスタリウムに帰った俺は、久しぶりに水晶公の元へと向かった。

 

本の山に囲まれた机に突っ伏して、何かを書きながらうたた寝している水晶公がいた。

起こさないように近くにあった毛布をそっとかけて、部屋を後にする。

 

未来を俺に繋いでくれてありがとう。

これからは俺が君を、未来へと繋ぐ。

そして、全ての世界を救えるか、なんて無茶苦茶言ってきたアイツの願いも繋いでやる。

 

英雄の名を背負わせられているんじゃない。

ただ人の思いを、未来に繋いでいくんだ。

それが俺自身の希望と言えるものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Bloodborne私見。

狂気の中にも、理はある。

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PlayStation+に加入していると、毎月ソフトが何本かフリープレイで遊べる。3月、フロムソフトウェアのソフト、“ブラッドボーン”がプレイできるというので、いつかやろうと何となくダウンロードした。

フロムのソフトといえば、PlayStation3のころ、デモンズソウルをプレイしたくらいで、あまりの難しさに挫折してしまったというくらい、良い思い出がない。

それでも自分がブラッドボーンをダウンロードしてみる気持ちになったのは、その内容がホラーゲーム(だという認識)だったという一点に尽きる。

 

ホラーゲームが好き、というとえっどうして、怖い思いをしてまでプレイするの…という反応をされる。見た目は血みどろだったり、グロいシーンを見せられてもなぜ平気なの?と思う人がほとんどなのだろう。

しかし自分がホラーゲームに求めるのは、その種の怖さではない。その狂気の世界にある秩序と理をみてみたいという欲望なのである。

 

こんな考え方をしているのは、世界でひとりくらいだろう…と思うような狂気的な思考は、誰しも1つは持っていると思うのだが、自分以外の誰かが全く同じことを考えを持っていた衝撃を受けたことはないだろうか?自分はある。

小学生か中学生の頃、自分は自分がまだ訪れたことがない場所、例えばアメリカとか中国だとか、その地は実際には存在していないのではないかと思っていた。しかし誰に言ってもその考えを理解してもらえず、こんなことを考えているのは、世界で自分だけなのかもしれないと本気で思っていた。

そんな時、世にも奇妙な物語というドラマで、全く自分の考えと同じ男が出てくる話をみて、驚愕してしまった。そして、自分が抱くただの狂気だと思っていたその思考が、世に存在する理になったと感じた瞬間でもあったのだ。

 

前置きが長くなったが、自分がブラッドボーンをプレイし、クリアした時に感じた気持ちが、まさにそれだったのだ。

人の思考は突き詰めれば狂気、だがそこには理路整然とした論理が貫いているのだ。

 

ホラーアクションという認識で始めたブラッドボーンだったが、終わってみれば宇宙の話だった。何を言っているのかわからないと思うが、これが真実だ。

 

プレイ時間は50時間程度でクリアしたが、体感では200時間はやったような疲労度だった。あの世界の中で、濃密な緊張感を強いられるのは大変だったが、絶望感はなく、前向きにプレイできたことが不思議である。

 

ブラッドボーンのあらすじだが、舞台は中世、主人公が目覚めると、ヤーナムという街におり、そこは“獣狩りの夜”を迎えている。街にはびこる獣化したなにかを主人公が狩人として狩り、この病気が蔓延した原因を探っていき、最終的には真実にたどり着く、というものである。

 

しかしながら、前編を通して物語はほとんど語られない。それどころが、クリアしても真実が明らかになったのかどうかすらあやしい。

だが、アイテムに書かれた説明文や、街中の人々の会話、メモ書きなどを断片的に集めると、その世界がなんとなくわかってくる。

 

ここからはかなりの私的見解。

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さて、自分にはもうひとつの持論がある。私たちの生きるこの世界、宇宙は一体なんなのか、ということを考えた時、やはり宇宙とは、誰かの脳内ではないか、と自分はずっと信じている。

そしてまた、自分の脳内にも宇宙が存在するし、別の誰かの脳内にも宇宙は存在し、入れ子のように宇宙とは広がっているのではないか、という結論である。もちろん、理論的な証明ができるわけではないが、ただ漠然とそうなのではないかと信じている。

 

ブラッドボーンの世界は、結論としては誰かの悪夢の世界だった、その誰かが目覚めることによって獣狩りの夜は明ける、ということが語られる。

しかしながら、世界の中にはまた、悪夢の中で誰か別の誰かが見ているであろう悪夢らしきものも登場する。そして(おそらく)この世界の人たちが自分自身の悪夢=宇宙を持つことを目指しているということもわかる。

そして主人公自身がその宇宙を手に入れるエンドも存在する。

 

まさに自分の考える、宇宙は誰かの中に内包されたもの、という考え方にかなり近しい思想を持ったゲームだったこともあり、夢中になってプレイしてしまった。

 

言ってみれば誰かの狂気、心の中にあるものを惜しげもなくプレイヤーに寄り添う気持ちゼロで構築された、完全にプレイヤーを突き放したこの世界観をきちんと形にし、一本のゲームとして世に出したフロムの勇気と力に敬意を表したい。

 

5月にはダークソウルのリマスターも出るということなので、購入する予定。シリーズ未経験の自分は楽しんでプレイしたい。

 

"光の道"

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アラミゴ奪還作戦が成功し、周囲が落ち着きを取り戻した頃、アイメリク卿から、たまにはイシュガルドにも顔を出さないか、と俺の元に書簡が届いた。

思えば、ニーズヘッグを退けて以来、イシュガルドからは足が遠のいていた。アラミゴの作戦の時も、アイメリク卿とはことばを交わしてはいたが、あの緊張感の中では昔を懐かしんでいる余裕などなかった。あの時の協力の御礼などもまだだと思い起こし、暇をもらってイシュガルドへ赴くことにした。

 

いくらなんでもあの極寒の地へ薄着で行くわけにはいかないと、自宅の納戸に収められたグレイシャルコートを探していると、壁にもたせかけているゲイボルグが目に入った。竜騎士から侍に転職してからは、手入れをすることも少なくなり、すっかり埃を被ってしまっていた。

時々は出して磨いてやらないとな、と思いつつもなんとなく目を逸らし、お目当てのコートを見つけると、納戸を後にした。

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久しぶりのイシュガルドは細かな雪がしんしんと降り積もり、静寂に包まれていた。俺は足早にアイメリク卿の元へと向かった。

部屋に入ると膨大な書類に囲まれたアイメリク卿が目をこちらに向けた。久しぶりだな、と言った彼の目が、俺の姿を見て丸くなった。

「作戦の時は槍を背負っていたはずだが…いつの間に持ち替えたのだ…?」

俺は少し気まずさを覚えて、頭をかき、最近ちょっと心変わりがありましてね、などと苦笑いを浮かべてやり過ごした。なるほど、というとアイメリク卿は部下に仕事をひとつふたつ指示すると、俺を客間へと案内してくれた。

 

「今日君を呼んだのは、ゆっくり話をしたかったのもあるが、もう一つは、皇都の竜騎士たちの行く末について相談したいと思っていてね…」

いつものように、紅茶にバーチシロップを入れながら、アイメリク卿は切り出した。

竜騎士たちの行く末…ですか」

「そうだ。竜詩戦争が終結した今、イシュガルドでの竜騎士の役割は、大きく変わらなければならないと感じている。まだ眷属たちの討伐などの役割は残っているが、彼らが今まで果たしてきた、ドラゴン族を退ける、という本来の役割は小さくなりつつある。そこで最後の蒼の竜騎士である君に、その生き方を導いてもらおうと考えていたのだが…」

アイメリク卿の目が自分の腰元の刀に向くのを感じた。

「…俺は蒼の竜騎士だとか、英雄だとか周りから付けられた名前が苦手で…俺自身はまだひとりの冒険者として自由な身でありたいんです。竜騎士のことなら、もっと貴方には、力になってくれるご友人がいらっしゃるではないですか」

俺の言葉に、アイメリク卿は少し困ったような微笑みを浮かべた。

エスティニアンはもう竜騎士の名を返上しているし、何よりもう、何かを彼に背負わせるようなことはー…」

そこまで言って、気まずそうに俺に紅茶を注いだ。

「すまない。だからと言って君に何かを背負わせていい理由にはならないな」

俺は笑うと、今回の旅の中でエスティニアンと再会した話を彼に話した。そしてエスティニアンが、アイメリク卿と同じ、竜騎士の新しい生き方を探していたことを話した。

「やはりふたりは素晴らしいご友人だということなんでしょうな」

「…それは驚いたな。彼も彼なりに前を向いて生きているということか…」

アイメリク卿は窓の外に降りしきる雪に目をやって、少しの間を置くと、俺に向き直ってこう聞いた。

「教えてほしい。君の考える新しい生き方とは、武器を持ち替えて戦うことだったのか?」

「俺の考える、生き方…ですか…」

俺はエスティニアンから同じ質問をされていたことを思い出し、ふたりはやはり親友と呼ぶに相応しい、と心で微笑みながら、昔の記憶を辿った。

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あれはいつの日のことだろう。

そうだ、エスティニアンとイゼル、そしてアルフィノと、フレースヴェルグに会うために、白亜の宮殿に向かった時のことだ。4人で焚き火を囲み、共に過ごした夜のこと、イゼルの作ったシチューを食べたあと、腹ごなしに俺はエスティニアンと少し槍の手合わせをした。

「お前の太刀筋は自由だな。荒削りだが、皇都の竜騎士には無い柔軟さをもっている」

エスティニアンはそう言って俺のことを評価してくれた。

「独学で槍を学んだようなものだからな。槍術士ギルドにいたこともあるが、年齢が高くなってからのことだから我流が抜けなくてな…」

俺は息を切らしながら返した。

「そもそも、お前は数ある武器の中から、どうして槍を手にしたんだ?」

エスティニアンはそう聞いてきた。俺はしばし考えを巡らせた。

「…俺は霊災で両親を亡くしたあとは、妹を食わせるために精一杯でな。グリダニアで木こりのようなことをして生計を立てていたんだが、長い木の枝を槍に見立てて槍術士の真似事をしていたのさ。森で出会う魔物たちを追い払うのにも役に立ったしな…理由なんてあってないようなものさ」

ふむ、とエスティニアンは頷くと焚き火の側に座り薪を投げ入れた。

「羨ましい限りだな。俺が槍を持った理由は、あの忌々しい竜どもに、家族を殺されたことへの報復をする為ー言ってみれば俺自身が決めたことではなく、あいつら竜族に背負わされたものだっていうことなんだ。俺は俺自身で生き方を決めたなんていうことがないんだ」

俺が黙っているとエスティニアンは続けた。

「だからこそ、この復讐が終わってしまったとき、俺自身が生きて行く理由があるのだろうか、本当は少しだけ怖くはある。…なあ、冒険者と呼ばれる自由の身であるお前が、英雄とよばれながらも、お前自身として生きて行く理由とはなんなんだ?聞かせてくれ」

俺は満天の星空を仰いで目を閉じた。

「…そんなこと、今の俺にもわからないよ。だがエスティニアン、お前が戦うのも、復讐が全てだというが、お前自身がいちばん、その過去から自由になりたくて闘っているように俺には思えるんだ。お前の戦いは、裏返せば、お前自身の自由への道だと思えば光の道なのかもしれないぜ?」

エスティニアンは俺のことばには答えなかった。いつのまにかイゼルとアルフィノは焚き火の周りで寝息を立てていた。

光の道ー俺が発した安っぽいその言葉は、深い闇の中に吸い込まれてあっという間に消えて無くなるほど頼りないものだった。

 

 

「俺はいつまでも自由でいるために、光の道を歩む覚悟で生きているつもりでいます。英雄とよばれても、光の戦士と呼ばれても、俺は俺自身である為に自由でありたい。この刀は、その決意でもあるんです」

長い記憶を巡って、どれくらいの間があったかは自分でもわからないが、俺はアイメリク卿に向かってまたそのことばを述べた。

「槍を持ち続けることが、俺自身の全てだと思っている時期がありました。でも誰かを守るのは武器ではなく、俺自身であることに気がついたんです。俺自身でかけた、俺自身への呪縛への解放を、新しい武器を持つことで示したかったんです」

アイメリク卿はそれを聞いて微笑んだ。

「君自身の自由、か…そうだな、答えが見えてきたような気がする。イシュガルドの民は今まで、歴史に理由づけられ、縛りつけられて生きてきた。その理由がなくなった今、彼らが戦うべき理由を、自分自身の手で見つけ出さねばならないということなんだろうな」

アイメリク卿とはその後も、イシュガルドの未来や、アラミゴが辿るであろう苦難などについて夜が更けるまで語り合った。窓の外には静かに雪が降り続いている。

 

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アジムステップでエスティニアンと再会した話には続きがある。

 

一連の話が済んだあと、エスティニアンから最近槍の調子はどうだ、と聞かれた。

俺は最近自分の竜騎士としての生き方に悩んでいる、と答えた。新しい技などを覚えていってもその性能を引き出すことも出来ず悩んでいると。

「なあ相棒、あの時俺に話したこと覚えているか?」

俺が首を傾げて考えていると、エスティニアンは肩をすくめて笑った。

「俺に言った、自分自身の自由の為の闘いは、光の道だ、って話だよ。竜詩戦争が終わった今、俺はあの時のお前のことばを噛み締めている。俺自身の光の道はどこに続いていたのか、今辿っているところさ」

エスティニアンは俺の目を見つめて言った。

「相棒、お前はあの時よりも多くのものを背負いすぎて、今の俺より自由を失っているように思える。お前もあの時俺に語ったときのように自由にあるべきだ。俺たち蒼の竜騎士の役目は終わった今だからこそ、それが示せるんじゃないか?」

俺はエスティニアンのことばに心が軽くなるのを感じた。俺はエスティニアンの顔を見て、深く頷いた。

「俺たちは槍を背負っていなくても、運命が導くならまた道が交わる時がくる。その時は互いに誰よりも自由でいよう」

エスティニアンはそういうと、背を向けて去っていった。

 

俺は俺自身の生き方をする。

 

ウルダハで東方からきた侍の話を聞くのは、俺がそう決断したすぐ後のことだった。

 

食事、薬、装備云々の話。

Twitter界隈で、IDでの装備更新や、食事、薬のあり方についてまた議論になっていたので書いてみます。

 

①そもそもなぜ、これが議論されてるのか考えてみた。

 

ダンジョンごとに装備の更新をしてこない人が増えた、という話題をよく見ます。私自身も、レベリングルーレットにいくので、確かにそう感じることは増えました。

私がプレイを始めたのは4年前、当時はこんな話題が盛り上がることがあったか考えて見たんですが、こんな人がいてね、くらいのレベルだったように思います。

 

私は4年目にして初めて1から詩人を上げました。その時感じたことは、1つのダンジョン、特に新生エリアのダンジョンは1〜2回しか行かずに次のレベルになってしまい、装備を集めるなんてことはやろうとしなければできません。

そしてマケボをのぞけば、製作装備はかなりのお値段。だから別に「クリアできて死ななければ」装備の更新を考えることがないかもしれません。

 

この「クリアできて死ななければ」の部分も重要です。今は新生エリアの敵の強さも下がり、IDで死ぬということは、装備が原因という部分ではほとんどなくなりました。つまり死なない=装備適正OK、という認識になってもそれはそれで正しいのかもしれません。

昔は装備が揃っていなければ死ぬ、というダンジョンは良くあったし、そこで装備の大切さを教わっていたように思い起こします。

 

そして、指摘してくれるひとが多かったと思います。その装備だとキツイよ、ダンジョン出たら買った方がいいよ!と知らない人から教えてもらうこともありました。

でも今は、それですらギスギスだと思う人もいるし、Twitterなどてスクショをアップされたりしているひとをよく見ますし、面倒くさいのが先に立ってしまいますね…自分も一言「ウザい」と言われてから知らないひとに指摘するのは金輪際やめました。

 

②じゃあどうすれば解決するのか考えてみた。

 

IDにもアイテムレベル制限付けよう!

…で解決なんですが、51ID、61IDだけつけるだけでも違うのかもと。オーラムで取れた装備で51はダメ、というのは確かに最近始めた人にはわかりにくいのかと思ったりしました。メインジョブではクエストで装備が貰えるそうですが、サブはそうは行かないですよね。ここら辺の誘導は欲しい。

 

③なぜ装備の更新が大事なのか。

 

○タンク…HP、防御力がたりないと攻撃に耐えきれない。そこは装備でしか補えない。

○ヒーラー…回復量、MPは装備に依存する。回復しきれないときは装備を疑え。

○DPS…早く倒すためには装備が重要。早く倒せなくてもよいのでは、というひとへ、タンクのバフとヒラのMPは永遠にあるわけじゃない。

 

④食事、薬はどうするべきか?

 

○食事

ID…基本的には自由。装備に不安があるときは食べるのは効果的。

極…絶対必要。HQを用意。いらない理由がない。

レイド…食べてない人を見たことない。と思いたい。

 

○薬

ID…いらない

極…練習では余裕あれば。フェーズ超えられないなら飲んででも超える。早期のクリア目的PTなら絶対飲む。

レイド…飲まないひとをみたことがない。と思いたい。

 

というのが個人的な意見です。

 

更新しなくても、食事しなくても、薬飲まなくても、という話はききますが、それをしなくて良い理由もメリットもないのもまた事実。自分もギルなさすぎ問題いつもかかえてますが、食事薬代はなんとか稼いでるぜ!

 

 

更に闘う者たち

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紅蓮のリベレーターから始めた光の戦士たちも、追いつきやすいFF14のシステムもあって、初めて最新の高難易度コンテンツに参加できる人たちがぼちぼち出てきたと予想します。

 

このゲーム、動線がハッキリしているから、それに沿って進めていたら、いつの間にかエンドコンテンツの入り口に運ばれていた…というのはよくありそうな話です。

 

極蛮神やレイドが追加されると、その話題で周りが沸き立つから、いかないといけないような気持ちにさせられます。

…が実際にいってみたらあまりの世界の違いに絶望したとか、Twitterに流れていそうな案件です。

 

ゲームを長く楽しむためには、自分が楽しいと思えることをやること。これだけです。友達とSS撮るのが楽しい、ハウジングが楽しい、ギャザクラが楽しい。この楽しさに貴賤はありません。

 

私はFF14をプレイして4年、コンテンツの横の広がり方はとても広くなったなあと感じています。プレイして1〜2年は、コンテンツの隅々まで手をつけて、もうやることないなあと思うことも多々ありましたが、 今はとても全部はやりきれない量になったなと感じています。

 

コンテンツの少なさ、或いは戦闘職コンテンツへの特化に嫌気がさし、引退していった人たちも沢山いました。最近始めた人たちは、選択肢の多さに戸惑いを覚えていることでしょうが、私からしてみれば幸せな悩みだなとすら思えます。

だから今できる楽しいことを信じて、長くプレイして欲しいなと自分は思います。

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かといって、レイドに参加しているひとを、別のカテゴリの人間、と分けてみては欲しくないかなとも思います。

レイドに参加している人間も、ひとつのコンテンツを楽しんでいるプレイヤーだからです。

 

だから、ちょっと自分もやってみたいかな、と思ったら、気軽にエンドコンテンツにも参加してみて欲しいです。

14はエンドコンテンツへの敷居が良くも悪くも低いので、参加しやすいですが、実際の装備やプレイヤースキルは高いものを要求されていることが多く、不足を感じて落ち込むこともあるかと思います。

 

それでも、自分を整えて努力したものを、クリアという形で実感できるのも醍醐味ですから、自分の身の丈にあったプレイを心がけて参加してみて欲しいです。

 

自分は絶対エンドコンテンツにはいかない!というスタンスでしたが、大迷宮バハムート侵攻編実装当時、仲の良かったフレが「一緒にやりたい、君ならできると思うから固定に推薦しといた!」と勝手に話を進めていたのが参加のきっかけでした。当時は勘弁してくれ…って気持ちが8割でしたが、2割は一緒にやりたいといってもらえたことへの嬉しさがありました。

 

自分はゲームが上手いプレイヤーではないので、装備がある程度整い、攻略法が固まった頃から参加する、ということを心がけています。自分の身の丈にあったプレイを探して、無理を感じたら休む。長く楽しみたいので、自分のペース配分は大事だなと日々感じています。

 

エンドコンテンツは自分の不足を感じることもできるし、ゲーマーとして成長の機会だと自分は捉えています。大袈裟だと笑うひともいるとも思いますが、真面目に思いっきりやることも、時にまた楽しいものです。

 

 

妹からの手紙

親愛なる兄さん

 

兄さん、お元気ですか?

黒衣森の木々たちは新しい芽を出し、若葉たちが新緑の薫りを運んできてくれます。兄さんが冒険者になるといって旅立っていったあの日から、どの位の月日が経ったのでしょう?

私たち夫婦は、木々たちの声を聞きながら、園芸師として穏やかな日々を送っています。兄さんはお元気ですか?

 

兄さんが冒険者として旅立ってから、最初は手紙でしか様子を伝え聞くことがなかったので、噂に乗って届くエオルゼアの英雄が兄さんだと聞いた時には、俄かには信じられませんでした。だけど、今ではなんだか、わかるような気がしています。

 

私が13歳の時ー今から10年も前のことになるのねー私が家族に黙って、黒衣森の奥の花蜜桟橋に花を摘みにいって道に迷い、ワイルドホグレットに襲われた時のこと、覚えている?

水辺に追い詰められて、もうダメだ!と思ったとき、颯爽と現れたのが兄さんでしたね。あの時みた兄さんは、私にとっての英雄そのものだったわ。

槍を向けて立ち向かった兄さんの顔を、ホグレットの爪が傷つけたけど、怯むことなく森の奥へと追いやってくれたよね。

あの時私は兄さんから叱られることを覚悟していたけれど、兄さんは優しく笑って頭を撫でてくれた。「今日は母さんの誕生日だ、母さんの好きな花を早く摘んで帰ろう」と笑ってくれた。兄さんは私のこと、何でもお見通しだったんだよね。

 

それから5年後、あの第七霊災が起こって、混乱の中、私たちは父さんと母さんを失った。私は18歳、兄さんは30歳、私は立ち直れないほど憔悴していたけど、兄さんは私の顔をみてこう言ってくれた。

「大丈夫、何があってもお前を守るから」…と。

 

それから5年、私を守ったせいでできたワイルドホグレットに付けられた顔の傷ーいや私の存在そのものが、兄さんを結婚から遠ざけてしまったのではないかと思っていたわ。

兄さんは、俺は1人でも生きていける存在なんだ、お前に心配されるほど弱くはない、と笑っていたけれど、それは本当の心から出たことばだったのかしらと今でも考えるの。

 

私が23のとき、優しい園芸師の夫との結婚を考えていることを伝えたとき、兄さんはとても喜んで、こう言ったわ。

 

「これで俺の役目も終わったな!これからは冒険者となってまた新しい人生を探すさ」

 

それは、兄さんがひとりになることを心配する私の心を、見透かしてついた優しい嘘であると同時に、兄さんの本心でもあったこと、私には分かっていた。

兄さんは仕事が終わったあと、毎日夜こっそり黒衣森の奥に出かけては、槍の訓練をしていたんだもの。

 

私だけの英雄だった兄さんが、今やエオルゼアの英雄になったんだね。

 

一人でも生きていける存在なんだ、そう言っていた兄さんが、今は暁の血盟や、いろんな人々の間で生きていること、私は必然だったんだと思います。

 

兄さんが新しい土地に行くたび、私のみたことのない果物や野菜をおくってくれるので、夫と楽しみにしているけど、今度は東方の国にいるときいてびっくりしています。兄さんが贈ってくれた、東方の果物、パーシモン(東方では柿と言うらしいわね)がとても美味しくて、園芸師仲間と、グリダニアでも育てられないか、調べているところよ。

 

ラベンダーベッドに一軒家を買ったと聞いて、夫ととったサンシャインアップルを届けているけど、食べてくれてるのかな。世界中を飛び回って、家に帰ることなんてほとんどないということだし、心配しています。

 

英雄の妹ということで、私に危険が及ばないよう、私には会いに来ないようにしているみたいだけれど、たまには戻ってきてほしい。いや、今回は戻ってきて、という手紙です。

 

私に赤ちゃんが出来たの…!

生まれる時には兄さんにも抱いてほしいなと思って、実はこっそりアルフィノ様にも兄さんに会えるようお願いしたの。ごめんなさい。でもそういうことならと、私たちがゆっくり会えるよう、グリダニアの不語仙の座卓を用意して下さるそうよ。

秋の気配がして来るころです。楽しみにしていてね。その時には花蜜桟橋であの花を摘んで、父さんと母さんの墓前にもふたりで供えようね。

 

槍を抱えて出て行った兄さんが、今は侍として生きていると聞いています。異国の衣装、着流しで帰って来る姿、楽しみにしています。

 

それでは今日はこの辺で。

 

あなたの妹より

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閃をひき、孤を描く

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紅蓮のリベレーターは、エオルゼアで過ごして丸4年目の、ひとつの決断をする節目となった。

 

自分は新生から4年、竜騎士道を貫いてきた。酷い霧の中を歩いたり、陽の目を浴びたり、楽な道のりでなかったが、竜騎士愛あればこそで楽しくやってきた。

 

しかし、ふたつ前のエントリにも書いたが、歩む道の中で出会った人々の想いを受け継いで生きるー自責と償いを課した人生に終止符を打ち、また新たな気持ちで旅立ちたい、という気持ちが生まれてもいた。

 

それが転職という答えに繋がったのは、竜騎士の調整があったのがきっかけである。役割の比重がシナジーに置かれ、その是非はともかく、今までの使用感と全く別物に感じられ、戸惑いを隠せなかった。Twitterでも後ろ向きなことばかり言っていたように思う。

 

そんな時、フレンドさんに木人殴りに誘って頂き、竜騎士として一頻り叩いたあと、色々言われますけど、好きなジョブをやるのが1番ですよ、といって頂いたことで気持ちが晴れたのだった。そうだ原点に帰って楽しまねば…となったとき、心機一転、新しいジョブに挑戦してみようと素直に思えたのだった。

 

折角だし新しいことを、ということで、紅蓮で新たに追加されたジョブ、同じ近接職の侍を選んだ。

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侍は簡単な操作でDPSが出る、などとは前評判、実際は70になってからが本番で、dotバフ維持など臨機応変さが求められる玄人ジョブで、人によってDPSが出る出ないの差が激しいことが想像される。

 

まだまだ試行錯誤を繰り返しているが、新しいことを試すのはいつの時も楽しい。

4年目のジョブチェンジは、自分の年齢的にも性格的にも、人並み以上のパワーが要ると感じてはいるが、今回は逃げではなく前向きな動機、いつでも竜騎士に戻れるぞという軽やかな気持ちでプレイしていきたい。

 

侍はPTの為にシナジー的なことでできることがほぼない。そういう意味では孤独だけど、侍のイメージに沿った姿でもある。

職人的に自分の仕事をする侍目指して、日々修行していこうと思う。

先ずは初心を忘れないよう文字に残すことから。

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